今月の読書

混雑と待ち (経営科学のニューフロンティア)
高橋 幸雄 森村 英典
朝倉書店
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仕事で待ち行列を扱うようなプログラムを書くことがあった。そのときはあまり知識がなかったので適当に済ませていたが、もっと理論的な背景がほしいと思って購入した。

本の内容としては、行列ができる具体的な例を挙げながら、それについてどのように考えるのかが解説されている。また、数式ではどういう風に表されるのかということがそれっぽく示されている。具体的な例を挙げている部分が結構長いので、なるほどこういう場合もこんなふうに捉えて扱うのかというのがよくわかる。数式のパートは読み飛ばしてしまった。

単位時間あたりに捌ける客の数と来客数の大小に応じて、分析の仕方が違う。この見方が自分にはなかったのであとでそれっぽく前の仕事を修正したい。ただ、この本だけで待ち行列を最適化できるかというとそれはよくわからない。

増補改訂版 Java言語で学ぶデザインパターン入門 マルチスレッド編
結城 浩
ソフトバンククリエイティブ
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うーむ。イマイチ。ここで出てきているパターン言語って通じるものなんだろうか。マルチスレッドのプログラミングについてはJava Concurrency in Practiceを読めばよいと思う。

テストから見えてくるグーグルのソフトウェア開発
ジェームズ・ウィテカー ジェーソン・アーボン ジェフ・キャローロ
日経BP社
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筆者は既にMicrosoftに戻っているというアレな感じの本。QAチームがいかにして創造的にテストをできるかということを追求していますというように読めた。

本の中で出てきたACCという話が面白かった。これはソフトウェアをAttribute、高速性とか正確性とかソフトウェアに期待される性質、Component、認証とか通知とかソフトウェアのコンポーネント、Capability、間違ったログイン試行時にメールを送るとか特定のユーザーにのみ限定で公開できるとかソフトウェアの機能、という3つのレベルに分解するという話。CapabilityはAttriuteとComponentから成る。例えば間違ったログイン試行時にメールを送るというのは信頼性というAttributeと認証というComponentから成る。

もちろんすべてのComponentがすべてのAttributeに対応するCapabilityを持つわけではない。だからある特定のComponentに対するテストをしようとしたときに、このAttributeについてのテストをしようという考え方ができる。他にもComponentごとではなくAttributeごとにテストをするという軸も生まれる。本にはもっといろいろリスク分析とかの話が広がっていた。

こういう分析がされているとユーザーにどういった期待をもたせるべきか、こういう機能が良さそうだけどつけるべきか、というような判断にも使えそうなので、用途が広がっていい気がする。

英語で読むグレート・ギャツビー (IBC対訳ライブラリー)
F・スコット・フィッツジェラルド
IBCパブリッシング
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The Great Gatsbyが好きなのでつい買ってしまった。原書よりも平易な英語で書かれているが、平易にする過程で著者の解釈が入っていて自分の印象と違ったりした。英文とその翻訳が見開きで左右に載せられているのだが、翻訳のほうはなかなか残念な出来な気がする。

Yコンビネーター   シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール
ランダル・ストロス
日経BP社
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ロシアに行く前に空港で見かけたのだが、これから飛行機に乗るのに荷物を増やしたくないということで買っていなかった本。前に読んだIn the PlexみたいなY-Combinatorの中に入って密着取材したという内容。

自分はハッカーと画家を読んで、ポールグレアムのハッカー信仰があまり好きではなかったのだけれども、この本を読んだら彼の印象が変わった。単純にプログラムが書けるだけだと、やってみたいからやる、面白そうだからやるという感じになってしまい、ビジネス的には何の問題も解決しないことをしがちだと思っている。この本を読む限り、彼はプログラムが書けるのは最低要件で、それに加えてきちんと「解くべき問題」を探すようにしているように見える。解くべき問題かどうかを見極めるために、レストランでクーポンを餌にレビューをしてもらう実験のところが非常に印象深かった。

ディペンダブルシステム―高信頼システム実現のための耐故障・検証・テスト技術
米田 友洋 土屋 達弘 梶原 誠司
共立出版
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中間発表が終わった後に先生に手渡されて、「自分、今こういうレベルなのに本当に修士課程卒業できるのかな」と思いながら読んだ本。

今まで論文を適当に読んできたので、サーベイ論文っぽいである程度まとまった知識は得ていたけれども改めて体系的にこういう情報を得られたのは良かった。

今までBDDの実際の構築とか、LTLからオートマトンへの変換やオートマトンを合成してからの空判定、Büchiオートマトンの受理判定についてよく知らなかったので非常に参考になった。

仮説思考―BCG流 問題発見・解決の発想法
東洋経済新報社 (2013-05-02)
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うーん。イマイチ。仮説を立てるというのはまぁそれはそうで、その上でどうやって仮説を立てていくのかについては勘と経験で数こなせばできるようになるよハハハ、という感じになっている。仮説を立てるということをやって来なかった人向けで、自分は対象読者ではないのだと思う。


photo credit: ~Brenda-Starr~ via photopin cc
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