トイレ事情について

ウォシュレットというものを自分は長い間使ってこなかったのだが、最近になってようやく使い始めた。ウォシュレットが無い生活なんて信じられないという人を見たことがあるが ― いや、その人がウォシュレットを使っているところは見たことは無い ― しかし、一度使うとなるほど確かに手放せない感じがする。最近では携帯型ウォシュレットもあるようだ。自分としてはそこまでして欲しいとは思わないが、欲しい人は欲しいのだろう。

この類のものは生活必需品でもないし、どういうふうに認識するのが良いのだろうか。娯楽品というと少し違う気もする。だが前のバイト先で、昼を食べた後には必ずひたすらウォシュレットを使っていた人がいたので、もしかしたら娯楽品で良いのかもしれない。そのときは「だれだれさん、どこにいるか知ってますか?」と聞くと「(トイレで)儀式やってるんじゃない?」という返答が返ってきていた。言い得て妙である。

トイレの個室は通常1人で入るものであり、他の誰かがどのようにトイレを使っているのかは全く分からない。このような状況で、我々はいかにしてトイレの使い方を覚えたのだろうか。もしかしたら小さい頃トイレトレーニングの時期に教えこまれたのかも知れないが、少なくともウォシュレットの使い方は教わらないはずだ。自分はどこで「このボタンを押すと適度な温度の温水が適度な圧力で噴射されおしりを綺麗にする」という情報を得たのだろうか。きっと宇宙人が初めて地球のトイレをつかうときは、洗浄しようとしてウォシュレットのボタンを押してしまうに違いない。それにより宇宙大戦争に発展し、スターウォーズの世界が到来してもおかしくはないのだ。


トイレは現代社会でプライバシーを守ることができる数少ない場所の一つだ。その空間が心地よいのか、出かけた先で個室を探そうとしてもかなりの確率で一杯になっている。汚いところだとそんなことは無いのだが、定期的にきちんと清掃されているようなところだと、例えば家電量販店のトイレや割と最近できた大きめの商業施設だとその傾向が強い。1人でゆっくりできる都会のオアシス的な場所が、無料で開放されているというところに魅力を感じる人はかなりいるようである。提供者側もそれを理解しているようで、有料トイレや会員制のトイレも出てきている。

2枚目のトイレがある渋谷ヒカリエについて言えば「ヒカリエ トイレ」で検索すると、女子トイレが凄いという記事がかなり出てくる。逆に男子トイレは話題に上がらないのでお察しということだろう(それでも新しいビルなので綺麗なのだろうが)女子トイレは男性からしてみれば未知の領域、最後のフロンティアだ。とは言いつつも、もしかしたらドラマThe Office のとある登場人物のように、一定料金を払えばもしかしたら男性も利用することが可能?になるのかもしれない。


よりトイレの娯楽性を追求した例としてトイレッツが挙げられる。これは男性用小便器にセンサーの類をつけて、そのセンサーから読み取った情報をもとにゲームをするという風変わりなコンテンツである。

以前より男性はあれだけ大きい便器を外して、良からぬところに尿を出してしまうという傾向があった。この結果便器の外が汚れやすくなり、壁などが変色しやすくなってしまっていた。防止策として、従来手法では「一歩前へ」という張り紙がしてあったり、最近ではトイレに「的」のような印をつけることによって男性の意識を集中させ、便器の外へ出てしまうことを避けたりするという手法が使われていた。このゲームはそれらにゲーム性を加えることで効果性を高め、かつ話題性をもつようにしようという試みだ。

実際このトイレを利用したことがあるのだが、いまいちどうやって判定しているのかよくわからない。50円払うことによって過去の利用者と対戦できるようだが、お金を払うと必ず勝つようにできているように感じられた。接待トイレである。また、コンテンツとして多少下品なものになっていた。男性向けだから仕方がないといえば仕方がないし、トイレで上品なコンテンツを提供しても、それはそれで読めていない感じはする。


ちなみに自分がウォシュレットを使うようになった理由は、偶然肘があたってボタンを押してしまい、意図せず体験させられたためである。


photo credit: TOTO