社員食堂見聞録
今年もまた、就活シーズンがやってきた。自分も昨年就活の波にのまれていったわけだが、今度は後輩たちが就活の波にのまれようとしている。
後輩たちがより自分にあった会社を選べるように、自分からもささやかなアドバイスをしたい。自分も実際に会社に勤めているわけではないので、あまり偉そうなことは言えないのだが、他人と自分の「会社を選ぶ基準」を比較してみることで、より広い視野が得られればと思う。
さて、会社を選ぶ基準だが、人によって様々だ。お金だったり仕事のやりがいだったり会社のネームバリューだったり。多くの人は単一の評価軸は持っておらず、それらの軸を混ぜながら、こういうのが良さそうだと判断している。
様々な評価軸の中で自分が他の人よりも重要視したのは「食事」である。周りをみても、あまり食事に注目して就活をした人はいないように思う。そこで、実際に自分が会社の中に入って食事をした企業の話をしたい。
Googleの場合
Googleはどうやら検索エンジンよりも社員食堂のほうが有名なのかもしれない。というのも、家族にGoogleについて聞いてみると、母も妹も「社員食堂」が真っ先に出てきた。(さすがに父親は違ったが。)
この会社の社員食堂は、朝昼晩、三食無料で食べられる。ブッフェスタイルの食堂で、好きなものを好きなだけ食べることができる。無料というのがポイントで、例えば自分の大学の学食では好きなものを取ったり注文してトレーにのせた後、最後に会計となるのだが、無料だとレジに並ぶ必要がない。また、「うーん、今日はもうちょっとサラダをとっておけばよかった」と思ったら、もう一度サラダバーに行って取ってくれば良い。
選べるメニューも広く、主なおかずが日替わりで何種類か出て、サラダバーがある。他にも日替わりの麺類やデザートが選べる。日本っぽいのはご飯とかお味噌汁があったり、日替わりのカレーがあったりするところだ。また、有名どころでは寿司が定期的に出る。自販機も無料なので、そこから飲み物を選ぶことができる。
三度の食事以外にも、オフィスのそこかしこにちょっとしたキッチンのようなものがあって、お菓子とかコーヒーを入れることができる。以前エスプレッソマシンについて書いたことがあるが、それはここでエスプレッソマシンを使いまくったことがきっかけで、ドハマりしたからである。
COOKPADの場合
COOKPADはさすがレシピサイトを運営しているだけあって、社内にキッチンがあって、それを使って自由に料理をすることができる。これによって自社サービスのドッグフーディングができるので、会社としては一石二鳥で良い。
キッチンだけでは料理はできない。料理をするためには食材が必要だ。この会社では食材も定期的に補充されており、自由に使うことができる。足りない食材があれば補助が出て購入することができる。調味料などはまず足りないことはない。よくわからないカレーにつかうスパイスまである。旬の食材が入荷されたりするので、秋刀魚の塩焼きが作れたりする。
「広いキッチンでいろいろな食材が使えて好きな料理が作れて充実!」なのは間違いないが、料理はそれだけではない。料理の後は後片付けが必要になる。この会社のキッチンは何かと料理を作る部分がフォーカスされがちなのだが、実際に料理を作ってみて感動したのは、キッチンについている業務用食洗機である。大抵の食器はそのまま食洗機に突っ込めばよく、数分で洗い上がって出てくる。後はさっと拭いてしまえば終わりである。自宅はもちろん、実家にも食洗機というものが無かったので、いたく感動してしまった。
他にも飲み物は冷蔵庫から飲み放題、お菓子は食べ放題ももちろんついてくる。エスプレッソマシンもあるが、デロンギの全自動のやつなので、Googleと比べるとちょっとおもしろみが無いマシンだ。(しかしこれは個人の趣味なので、コーヒーを入れる分には問題はない。)エスプレッソマシン以外にも、水出しコーヒーに使うでかい器具らしきものがあるのだが、使い方がわからないので使ったことはない。
料理ができないあなたへ
ここまで見て、料理ができない、または料理にあまり興味がない人は「COOKPADは自分で料理をしなきゃいけないのか。自分は料理全然したこと無いし、どっちかを選ぶとしたら、食堂があるGoogleに行こうかな」と思ってしまいがちだ。そう思うのはよくわかる。だが待って欲しい。自分も料理とRubyが全くできず、COOKPADでインターンに行く直前になって料理とRubyの基本の本を買って勉強したのである。料理ができないのであれば、となりに料理ができる人がいるので、その人を見ながら学んでいけば良いのである。
インターンで料理をしているときに、メンター氏に言われた、印象に残っている言葉がある。「誰もが最初は初心者ですよ。失敗しながら学んでいけばいいんです。」そう、誰もが最初は初心者なのだ。誰もが最初はGitでForce Pushをし、青くなる経験をする。それを乗り越えた後に、Gitのきちんとしたメンタルモデルができていく。Gitと同じで、誰もが最初は料理をすることはできない。だったら学んでいけばいい。
考えてみれば、周りの人も、かつては料理ができない男子学生だったりしたはずだ。あなたがどれだけ料理ができないのかもわかっている。だから、大事なのは「今料理ができるかできないか」ではなく「普段料理をしないけれども、間近で他の人が料理をしているところを見ながら学べるチャンス。もしかしたら、料理ができない人からみた視点でサービスを見直すことができるかもしれない」ぐらいの気持ちがあるかどうかなのだ。
実際、料理をするのは楽しい。プログラムを組むのが楽しいのと同じように、料理をするのは楽しいし、エスプレッソをいれるのも楽しい。何かを作るのは楽しいのである。そして、料理を作るという点に関して「毎日の料理を楽しみに」を掲げている会社は、伊達ではなかったと言える。
食べても太らないと思っているあなたへ
残念ながら人間は食べたら太るようにできている。これは物理現象である。あなたは自分のことを神から選ばれた特異体質者だと思い、いくら食べても太らないという信仰を胸に抱えて生きているかもしれない。しかし、人間は物理的な存在なので、いくら精神的に自分は太らないと思っていても、物理的には太るのである。
太ったときの話をしよう。あれはGoogleにインターンに行ったときのことだった。そこでは日替わりでデザートが毎回二種類でていたので、自分はそれはもう毎日喜んで食べていた。(実際メニューは事前に出てたりするので、前日に目当てのメニューがあるのを目ざとく見つけると、次の日の朝に「うーん、眠い。起きたくない。ベットに居たい」と思っていても、そのメニュー目当てに出社できるのである。素晴らしいシステムだ。)
デザートにつきものの飲み物といえばコーヒーである。先に書いていたように、自分はエスプレッソマシンにハマりつつあったので、ご飯を食べた後は決まって同じインターンの友人とカフェラテをいれていた。(結局インターン期間中はカフェラテの作り方を会得できずに、研究室に戻ってからホコリを被っていたエスプレッソマシンで修行している。)そして、このコーヒーが更にデザートを加速させる。コーヒーを飲むと、甘いものが欲しくなるのだ。
あとはカレーである。皆様も良くご存知だと思うが、カレーになるとご飯が大量に食べられる。いつもだったら食べられないような量を平気で平らげられる。これが毎日日替わりで出てくるのである。
太る条件は完璧に揃っていた。確かに周りからは「あの会社に行くと太る」と言われていたのだが、自分もある種の太らない信仰にかかっていた。どうせ太るといっても、そこまで太らないだろうと高をくくっていたのだ。それがどうだろう、気になって会社の体重計にのってみたら、見事に痩せ気味から標準体重の上の方まで上がっていた。
念の為断っておくと、きちんとフードマネージャーの人がバランスの良い食事を考えてメニューを考えてくれているのだが、やはりブッフェスタイルなので、食べ過ぎれば太るのである。(ちなみに栄養バランスだけでなく、食材の使い方も結構工夫しているようで、よく見るといろいろな食材がいろいろな料理に、効率よく使われているのがわかる。)また、他のインターンに聞いてみたら「自分はこれは絶対太ると思ったから、このお菓子は食べないようにしていた」と言っていたので、きちんと気をつけている人は大丈夫のようだった。自分は気にせず「無限お菓子〜」と言いながらパクパクアホのように食べていた。
太るという現象は、別にGoogleに限ったことではない。食事が良い会社はどこでも起き得るし、社会人になって食事にお金を使えるようになって太るというパターンもある。大事なのは「あなたは物理的に太る可能性を秘めている」ということを自覚することである。太ることにフォーカスしてしまったが、太らなくても健康を害したらダメである。間違っても、カレーを二杯平らげた後に〆に梅昆布茶を使ってお茶漬けをいただくということはしてはいけない。
食で会社を選ぶということ
自分が体験してきた2つの会社の体験記と、そこから得られた注意点などを述べた。最初に述べたように、食というのは会社を選ぶときの基準の一つにしか過ぎない。しかし、あなたが毎日を生きる以上、食事を避けることはできない。あまり会社選びに食を意識することはないと思うが、食で見てみるというのも面白いと思うので、後輩の方々には是非そういう新たな視点を持ってみることをおすすめする。
ちなみに、GoogleもCOOKPADもインターンを募集しているはずなので、興味があれば応募すると良いと思う。技術やお金についてはわからないが、少なくとも食事については、両方とも非常に良い会社だった。
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